音楽の記録媒体 - 二胡弦堂

 


 百度百科によるとiPodが発表されたのは2001年10月23日らしい、iTunes Storeは2003年4月28日とあります。現在は2018年夏ですので、ネットで録音が販売されるようになって15年経過したことになります。当初は、やがてCDはなくなるのではないかと言われるようになり、太陽誘電が1989年にCDを開発して以降LPレコードがすごい速さで駆逐されたという歴史もあったからですが、現状はまだ生き残っています。その後、LPが復活の兆しを見せるようになってきてまたCDはなくなるのではないかと言われるようになっています。カーオーディオからもCDプレイヤーはどんどんなくなっています。実際、CDの売り上げは急落しているようですが元の市場規模が巨大なのでまだまだそれなりの規模を維持しています。

 今やネット販売が当たり前になって、さらにLPレコードの工場も増えています。テープまで復権しつつあるようです。提供方法としてはUSBなどもあり得るし、それにCDがあります。それでこれから録音して公開しようという場合に、果たして何を使ったら良いのかと思うことがあります。時代は変化しているし、現代はその変革期にあるようにも思えるのですが、しかし新しい何かが出てきているわけではなく、既成のものでバランスが変化しているだけにも感じられます。それでも現状ではネット販売とCDで考えることになると思います。

 この2つは他の方法と比べてコストが低めという特徴もあります。iTunes,Google,Amazonの全てに配信する場合、1曲で年間1,500円ぐらい手数料がかかります。アルバムは曲数に関係なく5,000円程です。Appleの場合は販売価格から3割支払います。ということはシングルの場合、150円で配信すると15回販売したらコストを回収できることになります。一見、簡単そうに見えますが、15はかなりハードルが高いと思います。2年目になるとほとんど回収できないのでは?とも思います。ネット販売の場合は短い視聴が出来ます。それを聴いて尚150円払う人は多分0.1%ぐらいでしょう。これは有名無名に関わりなくこれぐらいの比率だと思いますが、有名な場合は訪問者も多いので0.1%もあれば十分だったりします。それぐらい販売は、直接会える・・とか、握手券とか、そういう発想も出て来るぐらい難しいものです。

 それで自信がない場合は、CDになったりします。これはアルバムで1000枚ぐらい作ると、いわゆる我々が一般に想像する普通のCDで、ジュエルケースパッケージと言いますが、これは国産で最高で1枚1,000円ぐらいです。計100万円ぐらいです。リスクが大きいのでもっと少なく発注したりもできます。そこでケースとジャケットを別々に発注してコストを下げたりもできます。それでもCD1枚で500円を超えます。これが台湾になると1/10ぐらいになりますので、かなり低コストで作ることも可能です。中国だともっと安いかもしれませんが、品質が驚くほど悪く、再生できないものが頻発するのは普通なので、少なくともこれだけは絶対にすぐ西の大陸に気軽に発注しないようにしていただきたいものです。専門店や本屋に売っているメジャーレーベルのものですら問題があるほどの驚愕の水準です。印刷物も同様です。ケースも傷物がいっぱい来ます。欧米に発注すると送料はかかりますが、それでも日本より安い場合があります。ただ品質は日本が一番だと思います。CDは売れなくて在庫を抱えることになろうとも、家で保管する限り、別途年間手数料などはかかりません。だからちょっと気が楽ではあります。ライブでチョビチョビでも売れておればそれで良いという感じにもなるので、そういうことを考えると今なおCDは一般アーティストにとって最良ということになるのかもしれません。

 パッケージのビジュアルは内容について素早く多くのことを伝達します。CDパッケージは表面で概要を伝え、裏面で内容をリストし、ブックレットは詳細の情報を伝えます。視聴者はブックレットを眺めながらCDを聴くのを好みます。コンサートに行くとA4ぐらいの大きさの冊子が販売されますが、ホールは大体暗いので、文字を読みながら音楽を聴く人はほとんどいません。それでも冊子を購入するのを好む人が多く、開演までの時間にじっくり読んだりします。CD,コンサートホールどちらの場合でも、音だけでなく写真文字情報があった方が理解しやすいような感じが安心感をもたらします。唐突感がありません。CDはこういう視聴スタイルが得られるので満足感の高いものです。結局これがCDの廃れていかない最大の理由かもしれません。

 CDのパッケージの重要性についてあまり語られることはありませんが、LPレコードではジャケットだけでウンチク本が出たりするぐらいです。レコードぐらいになってくると中に解説する紙が入っていたら大きくて結構圧力があります。それで大抵は表裏だけになります。中に入っている紙は海外盤だった場合、翻訳とか補足情報だったりします。レコードの視聴者はブックレットではなくジャケットの主に裏面を眺めることになります。録音そのものと同様、ジャケットのデザインや内容も重要であるという認識が必要です。音よりも見た目の方が気持ちが伝わったりします。その上で音を聴くという流れが受け入れやすいパターンで視聴者が望んでいることです。新しいCDを聴くという行為は、何がしかのジャッジが求められる感がありますが、これを圧力と感じる人は多くいます。言い訳的なウンチクを仕入れ、ある意味マインドコントロールされた状態で聴きたがります。完全に音だけであれば、聴いた後に気の利いたことは言えなかったりするし、その状態の自分に居心地の悪さを感じたりもしますが、もし使われている楽器が何とか、そういう何でもいいから特別な情報があればそれだけで全然違ってきて意外と語れたりするので、何か高尚な感じがしたりして妙に自己満足します。とりあえず、その感じだけで良いのです。これが良いCDやレコードの定義でしょう。演奏者の方は真面目に聴いてもらいたいと、一生懸命録音したのだから音そのものにだけ集中して欲しいと思っていますが、ほんとうに良かったら、そういう風に聴いてる人もいるので問題ないし、いずれにしろ専門家も付加情報は必要とするものです。

 中国音楽をレコードでリリースするのはどうでしょうか。日本では東洋化成がプレスしていて、アジアでは他にはインド、中国上海広州、欧米には幾つもの工場があります。今のところニッチですが、今後もっと普及してくる可能性もあるので、前向きに検討せねばならない時代が来るかもしれません。