二胡の木材の材質には、どんなものがありますか? - 二胡弦堂

 


紅木。二胡の製作に使うのはこのような木材  ここでは現代の二胡に主に使われる材を説明します。古楽器の材については二胡古楽器の木材の材質には、どんなものがありますか?を参照して下さい。

 紫檀材はもともとインドネシア産で、王朝時代(清代以前)には貴族が用いる家具に使われる高級材でした。海南花梨は宮廷で使われ、それより一段劣る紫檀は貴族が使う木材だったと言われています。東南アジアにおいても中国と同様、紫檀材が貴族の家具として使われてきた経緯があり、その家具を解体して楽器に使うことがあるのですが、この古い紫檀を「老紅木」と呼び「明清料」などとも記載されているものがあります。その一方、比較的新しい木材も老紅木と呼んでいます。また単に「紅木」と呼ばれているものもあります。木材業界で紅木と呼ばれている銘木の多くは楽器にも使われますが、二胡では黄壇系を老紅木と呼んでいます。その他、大まかには黄花梨以外の花梨材を紅木としていますが「中国紅木国家標準」として定められている分類ではこれは「紫檀」です。黄花梨は降香黄壇(香枝)が本名で花梨に属さず老紅木に分類されます。香枝木以外では酸枝木と言われるものも老紅木でこれは広東省では紫檀とも言われます。それを東南アジアでも紫檀と言っていたのだとすれば、明清料もやはり老紅木なのでしょう。黄壇属、紫檀属どちらにも属す材料はあります。ここに挙げたすべての材はマメ科に属しますのである程度の近似性はあります。

 二胡で使われる現在の紫檀材の供給先の1つはインド産で、小葉紫檀についてはインド政府が厳重に管理しており、密輸業者が現場で射殺されてニュースになることもあります。向こうの報道というのは血を流した死体をそのまま映すんですね。たくさんの丸太と死体が転がっている中で森林管理員がうろうろし、斧が入れられて無残になった樹木を点検しています。アフリカ・マダガスカルにも紫檀材があり、これは出てきた当初2008年頃は高価でしたが後に人気がなくなり、現在では価格が下がっています。マダガスカル政府は自国は紫檀を産出しないとして通知していますが、販売の都合上、これを「紫檀」として出回らせています。これは実際には花梨らしいのですが、アジアの花梨とは異なるように思います。初期のアフリカ紫檀は牛毛紋がかなり出る非常に良い材でした。しかしこれが短期間で枯渇し、その後出てきたアフリカ紫檀は全く別のものに変わってしまいました。

 黒檀は柿科に属し中国では烏木と言いますが、現代ではほとんど制作されていません。黒い材料を黒檀とか烏木として出回らせていて植物学的には違うものですが楽器としては良いものも結構あります。この種の現代の黒檀は紫檀に近い個性があるように思います。本黒檀は紫檀とは随分味が違います。

 現在「紅木」として販売されている二胡は紅花梨などの材を使っています。楽器として驚くほど良いものもあります。安価ですが価格は供給量が多ければ下がるので、楽器として劣るわけでは有りません。しかし価格が下がると選別などはしてもらえません。紅花梨は良い材だと思うのですが、インド紫檀のようにわざわざ選別されたりはしていないので、よく探せばかなり良いものが見つかることもあります。見つかっても良い皮は張られていません。しかし古楽器をやる人はそこは気にしないでしょう。現代と昔は皮の評価が異なり、昔は現代には質が低いとされている部位を多用していたからです。

 日本の三味線や胡弓の場合は、現行の最高材は紅木です。次に紫檀、そして花梨です。中国の場合も三弦や琵琶はこういうランクで、これは木材自体が厳密には違うと思います。中国の二胡材、安い材からランク付けしてみます。

 雑木以外は、全部総称して「紅木」と言うこともあります。どの材を使っているかより、どんな質かの方が重要です。紅木は質によって価格が大きく違います。良いものはなかなか手に入りません。

景徳鎮二胡 変わったものでは景徳鎮の二胡というものもあり演奏可能です。風呂の中で演奏しているような感じの音で、飾りか余興の小道具と思ったのですが、決してそんなこともないようで、きちんと演奏家用に作れば普通の音が出るようです。

 良い材料の基準がわからなければ止むを得ず、例えば「印度紫檀」とか、そういうわかりやすいタグを参考にするしかありません。しかし実際のところ、雑木の方が印度紫檀より良い場合もあります。雑木が何かにもよりますが。印度紫檀は「紅木」の一種です。この紅木は二胡材の紅木ではなく、中国家具業界の紅木です。明確に分類できるものだけでも30種以上が指定されていて印度紫檀はそのうちの1つです。植物学的分類なので曖昧なものもあります。極論すれば本当は分類なんてものはどうでも良く、良い木であれば何でも良いのです。一方である程度の分類も必要です。それで、ある範囲、ある程度の個体数、長期的に伐採可能かといった基準を満たしたものに例えば「印度紫檀」とか、そういうタグをつけます。もしその地域の特定の木を数年で刈り尽くしてしまおうという計画であれば、その木には名前がなかったりします(学術的にはラテン語の名がありますが)。広範囲に相当な数があるにも関わらずです。それは計画植林であったりもします。そういう例は二胡材としては黒檀二胡に多いです。数年周期で材が変わるのはそのためで、そのせいで材を見たらいつ頃の二胡か分かるぐらいです。

 それでは裏の里山に見られる樹齢数百年の木はどうでしょうか。自然交配でどの生物学的分類にも属していないかもしれません。やはり名前はありません。無価値でしょうか。市場ではそうでしょう。しかし楽器には価値があるかもしれません(木材は長期乾燥が求められるので実際には使えませんが)。古い楽器を手にした時に、その材がどういう環境下に置かれてきたのかわからないので、実にいろんな色の材があります。黒くなってしまい、何なのかわからなくなっていたりします。わからない主要な理由は、現代には既に枯渇しているというものです。その時に重要な指標は「それがどれぐらいのグレードか」ということです。分類はどうでも良いのです。グレードが低ければ印度紫檀でも要らないが、良い物は雑木でも欲しいのです。それで家具業界の紅木の分類はアバウトです。質が良ければ何でも紅木になります。それでも良材はある一定の条件で算出するので、海南島(黄花梨)とか、インド(紫檀)とか、沖縄(黒檀)とか、アマゾンとか手堅いキーワードの重要性が下がるわけではありません。これらの魅惑的な単語に魅了されるのは正しい見識です。ただ、絶対ではない、唯一ではないというだけです。結局、老紅木が一番良いと言われていたりもします。