中国の大都市では楽器店は密集していますので、それぞれ助け合ってやっています。組合のようなものはありませんが、緩やかな個人的繋がりで商売しています。もしある店に在庫がなければ他の店に取りに行きますので、どこに行ってもだいたい同じものが買えて値段も同じということが結構あります。楽器本体のような割と高価なものでも同様で、他店を紹介するのではなく、その店から商品を持ってきて自分の店で売ったりします。すべての店が繋がっているわけではないので、楽器街があたかも1つの店のようであるというほどではありませんが、巨大な1つのショップのようだと考えても良いと思います。
それでも我々が顧客として外観を見た時にはどこも同じようであっても、各店舗は独立採算なので背後関係は異なります。大きな楽器工場と提携しているショップであるとか、特定の名工と契約がある、まず工房があってそこの直営店であるといったようなことがあります。そのことが各店舗の品揃えの違いに表れることもあります。工房直営店は安価に楽器を購入でき、修理についても自社で対応できます。また学校と提携しているショップもあります。楽器を学校に卸します。そういうショップの場合は、老師の需要に応えることもありますので、そういう人脈を持っている場合があります。音楽院を卒業した学生が開店する店もあります。また店員さんが音楽院の卒業生ということもあります。これらの人たちは自分の専門の楽器しか教えませんが、学校時代の人脈があるのでたいていの楽器については優秀な老師を用意できます。
何れにしても、実際の店舗を構えているところで怪しいところはないと思います。しかしネットで買うのはそこが割と有名なところであっても注意が必要です。全国的に有名な工房でもネットで買う人にはお得意さんには到底販売できないようなもの、しかし処分にも困るようなものを平気で送ったりすることがままあります。タオバオなどを通していれば、顧客が商品を確認してから送金されるので比較的安全ですが、このやり方を回避するために別の取引方法を提案するとか、実際に持ってくるといったようなこともあるのでこういうのは高確率で何かあります。しかしこの方法は店頭販売と大差ないようにも思えます。それでも全然違うと思っておいた方が良いです。もう払ってしまうとどうしようもないということが多いので、支払い方法についてはよく考える必要があります。適切な決済方法が見つかったとしても日本から購入する場合、不良品の返品が大変なのでその辺も考えておく必要があります。
こうして問題が多いという事実が顧客の方に疑いを抱かせる原因になりますので、顧客の方が警戒しなければならず、中国では基本的に信用しないことが普通になっています。しかし、露骨に信用しない態度は中国では受け入れられないのであまりにうるさいと販売を断られることもあります。だけど一方で多くの確認事項を必要とする状況であるのも確かです。それでどうするかというと、中国人で多いのはニコニコしながらも言うべきことはがっつり確認するといったようなことが常に見られます。何回か購入していたら習慣的に確認を怠ることはありがちですが、毎回同じ確認作業を繰り返さないといけません。中国商人はできないことでも何でも「できる」と言って無責任に仕事を確保しますので、納期を決めるだけでなく守られなかった場合にどうするかまで決めておかないといけません。納期が来ても「明日大丈夫」などとも言いますが、明確な理由がないのにそういう状況に遭遇したのであれば、明日もまた明日できると必ず言います。1回でもこういうことがあると以降は絶対に取引してはならず、ただ普通に「今回は時間がないから要らないかな」とだけ言って次回は発注しないことです。あるいは発注したままほっておいても何も言ってこないので大丈夫です。すでに受注した仕事をせずになぜか「仕事をもっとくれ」は言って来ますので、かなり意味不明ですが、こういう人はすごく多いので気をつける必要があります。連絡先は切らずに単に「今はない」とだけ言えば良いと思います。何でも100%できる、もはや彼らの言うことを聞いていたら万能なのではないかという錯覚さえ抱かせるような販売者も注意が必要です。時間がないという状況で取引しないように気をつけねばならず、購入先を1つに絞らない、幾つもあることを何となく匂わせておかないといけません。注文内容や納期を守らない人が信頼できない人という感覚がなく、普通に全体がそうなので、そういうものが習慣的に許されており、こちらにもその考えが期待されます。それでそれはOKとしておき、単に納期が来たら「今回は時間がないから他に頼みました」だけで済ますと、次回からはすごいスピードで納品されるようになります。この圧倒的スピード感も中国の特徴です。ただ大陸だからと言って全部が全部こういう状況ではないということも理解しておかないといけません。例えば、浙江省福建省あたりの販売者から買う場合は日本と同じ感じでも大きな問題はありません。しかしよそから引っ越して来てそういうところで商売をしている人は危ないです。中国人は必ず相手の出身地をすぐに聞きますが、国内で外国のように異なりますのでそういう習慣になってしまっているのだと思います。