写真の例は上海の有名な骨董街で見いだしたもので、二胡だけでなく幅広く中国の民族楽器に使われている弦軸の数々です。もちろん楽器本体にもこのような木材を使っているわけではなく、弦軸にだけ違う材料を使っています。これは中国の古楽器の大きな特徴の1つです。一方、現代の二胡はすべて同じ材で仕上げるのが基本です。これはおそらく文革期に二胡が現代の形に完成されてから採用された新しい制作方法です。
二胡は文革以前と以後ではかなり違った、別種と言っても良いぐらいに違う楽器になってしまったので、どちらが良いとか正しいということをはっきり言うのは難しいと思います。ただ二胡の古楽器の弦軸に別の材をわざわざ持ってきて使っていたということは、それなりの理由があってのことです。音質を考えて選択されているのは言うまでもありません。
それではなぜ現代には使われなくなったのでしょうか?
おそらく最大の理由は材が希少だからだと思います。これは黄楊材ですが非常に木目の細かいものを使います。現在でも注文すれば作ることは可能です。京胡では使われています。棗、烏木を上回る高値で取引されています。弦軸によって音は激変します。現代二胡でも可能ならば黄楊を使った方が良かろうと思います。
写真例はプロの奏者から修理に出された古い琵琶です。非常に精緻な、木目が判別し難い程の黄楊を使った贅沢なものです。