二胡は、2本の弦を同時に押さえて演奏しますので、通常張力は均等に張ります。しかし一部のスチール弦など、高音の響きに対する設計者の考えから、外弦は若干堅く張るものもあります。
それでも、スチール弦の銘柄間の相違は、それらと絹弦を比較した場合程、大きくはありません。絹弦は明確に外弦が堅いので、特に演奏の感覚が確立されている上級者にとっては、とまどいを感じる要因になっています。
この1つの理由は、まだ弦が安定していない(新しい弦はしばらく伸びる)ことがあげられます。しばらく使って音程が安定してきますと、差は少なくなります。
しかしそれでも幾らかの差があります。そうしますと、一定の圧力で弦を押さえている時に弓を換弦すれば、指で弦を押えている圧力が2つの弦で違うことになります。それでもこれで問題ありません。これで標準です。適切な圧が違います。もしこの差がなければ、それぞれの弦に適切な圧力をかけるため、指で調整しなければならないかもしれません。そのようなことをしなくても、綺麗な音が出るように張力を変えてあります。それでも内弦の高音は、少々強めに押さえた方がいいです。
清代以降の京劇の琴師の間で、明瞭な高音を出すためのテクニックとして言われていたことの1つに、両弦の音程差を完全五度に合わせないというものがあります。外弦を半音高くチューニングします。(注:梅蘭芳の琴師を長年務めた名手・王少卿 [京二胡の開発者] は、これとは逆に外弦を半音下げていたと言われています。それは、京胡を演奏するには彼の指があまりに太かったからだと言われています。)もし、完全五度でチューニングするなら、外弦の音に雑音が出るとされていました。このことは、弦の張力とも関係があると思われます。絹弦の製法が再確立されたのは、40年代頃ですから、その頃には、この問題は克服されたようです。それで、完全五度に合わせた時に外弦が強めに張るのだと思います。この方法で、五度に合わせても雑音が出るのを回避していると考えられます。