「中国音楽家協会二胡学会」とは何ですか? - 二胡弦堂

 


中国音楽家協会二胡学会  まず「中国音楽家協会」という大きな組織があり、有力音楽家が中心で構成されています。その下部組織として「二胡学会」があります。現会長は蒋巽風です。(注:その後、安如呖に変わりました。)副会長は大勢います。とりあえず、有名な方々はほとんどという感じです。特に何もしない会員としては会報が来る以外は、特に何もありません。中国はコンクールの多いところなのでそういう関係とか、テレビなどでも民族楽器が使われるのでそういう関連の仕事とか色々あるようです。参加できるものに関しては会報で募集があったりします。

 国家一級演奏員は年金があります。2008年当時で月700元です。一般の老人年金は、最近増えて200元です。しかし軍籍の演奏家は待遇が違い、受取っていた給料と同額が支給されますから数千元から万になるようです。国家二級演奏員は、一流音楽学院を卒業すればなることができます。肩書きのみで特に何もありません。

 重要なミッションは、より濃密な芸術活動を行い発展させることと、普及になりますが、これはこうした文化協会では世界共通です。しかし特に音楽は難しくて、民族音楽は衰退していない国はない程です。市場原理にゆだねるようなやり方だとかなり堪え難いので、中国では政府がかなり力を入れて保護しています。

 文化は歴史があるので古い時代の仕組みがあって、それを大事にしながら発展せねばなりません。それは言うは易しで極めて難しいことです。ところが成功しているところもあります。将棋界です。かつては織田信長から始まって後には江戸幕府が名人を任命していました。決まった家柄の者しか任命を受けられませんでした。大政奉還以降は実力を考慮されるようになりましたが、一番強い人が本業をやめられないので他に譲るということもありました。ついに38年に完全実力制に移行することで過去と決別し、優秀な人材が名人位を巡って激しく覇権を争うことで大きく進歩しました。特に4代名人・升田幸三については「もし将棋に寿命があるならそれを300年縮めた」と言われるほどの功績を残し、彼の革新的な戦術は現代でも高く評価されています。升田は田舎から単身で家出してきた放浪者でどの家柄にも属していませんでした。コンピューターが有用と見るやすぐに取り入れ、データベースを使って過去の棋譜がすぐに参照できるようになったことで研究が前進し、人工知能には繰り返し戦わせて化け物のように強くし、それを研究に活かすなど新しいものも積極的に取り入れてきました。しかし一番大きな要素は完璧に実力主義だったことでした。勝ち負けが明確で、審判の不正も介在しない、裏口段位取得とか、金で名人になるということは絶対に不可能で全てオープンでした。女性は弱すぎてプロになれないのであれば、女性だけの組織を構築し、解説の相手役や普及で活躍する彼女らを保護してきました。プロを目指す女性棋士が規定上の障害で壁があるのがわかればすぐに理事会を開いて規定を変えるなど非常に柔軟です。熱心なファンから支持されており、海外、さらには中国まで人口が増えているという優等生ぶりです。音楽の場合、完全実力主義という部分は同じようにはできません。そもそもそういうタイプのものではありませんからね。勝ち負けではないので。人材を幅広く受け入れるだけではなく、優秀な人材には活躍してもらわねばならないという難しさがあります。この点、日本の音楽業界は成功していますね。優秀なプロデューサーがアーティストを獲得して売り出します。育てたりもします。そこで民族音楽に戻ると苦戦しています。なんなのでしょうね。やはり新しいものが出てこないと難しいのかもしれません。わかっているで頑張ってはいるのですが、中国音楽家協会はそういうところで頑張る仕事をしているのです。文化協会というととにかくそういう仕事になりますね。

 中国国内のCD屋に行きますと驚くのが、西洋のクラシックと中国民族音楽の2つが売り場の9割以上を押さえ、他のポピュラーなどは肩身が狭くなっていることです(決して人気がないことはありません)。オリコンみたいなものもありますが、そういう客層はCDを買わないようです。ダウンロードできますからね。中国民楽コーナーは、いつも顧客が多いので、日本伝統芸能と比較すると驚きます。テレビを見ても、中央テレビの音楽チャンネルは、民族音楽、伝統戯劇が非常に多いです。この人気の維持は、多数のタレントを擁しているから可能なのだと思われます。この人たちは国家に保護されています。それでも若い人は、民族音楽から離れる傾向があるようです。新譜の発売は民楽は少ないので、今後衰退する可能性があるのかと心配です。

 楽器を学びたい中国人は、西洋管楽器を手にする場合が多く、親は子供に管をやらせたがります。これは軍で需要があり、軍籍は特権階級なので有利な職を求める意味合いがあります。弦は、相当上位であっても良い立場を得るのは難しいので、学習者は少ない傾向があります。日本人はこの事情と関係がないので、二胡人口は少ないながら、学習者(「自分は生徒である」と自ら言う人の人数)は中国より多いのではないかと推測されます。中国の老人と女性も、どちらかというと職業とは関係なく、そのためこれらの方々の二胡人口は多いです。中国の若い男性の二胡奏者は、非常に少ない印象があります。